お父さん、単身生活を満喫でタグ「ヴァージニア・ウルフ」が付けられているもの
今日は、ヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」を紹介します。著者は近代経済を学んだものならおなじみのジョン・メイナード・ケインズなどのケンブリッジ秀才グループのサロンを運営していた、秀才兄弟の一員であることで有名な女性です。父親はイギリス人名辞典で有名なレズリー・スティーブン。
このポートレートは色々なところに引用されているのでどこかで御覧になったと思いますが、ロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーのものです。
さて、「ダロウェイ夫人」は、ロンドンのウェストミンスターに住む英国の上流社会の末端、中産階級の上層に位置する50を過ぎた、最近容色にちょっと衰えを感じ始めた女性の一日を描いたものです。
「ミセス・ダロウェイは『お花は私が買ってくるわ』と言った」という書き出しから始まり、ウェストミンスターからヴィクトリア・ストリートを横切りセント・ジェームズ公園へ。
公園で旧友のヒュー・ウィットブレッドに出会い、ひとしきり昔を思い出したあとグリーン・パークの入り口、ピカデリーまで来てバスの通るのを眺め、ボンド・ストリートに向かいます。そしてヒューの妻への贈り物をさがピカディリに戻って来てハッチャーズ書店のショーウィンドウを覗きます。
思いなおしてボンド・ストリートへ・・・。こんな風に1920年代の英国、ロンドンを克明に描くきながら「ダロウェイ夫人」は始まります。
今日は「ジェイン・オースティン」(ASIN: 4121013433大島一彦著)という中公新書を借りてきて読みました。著者はジェイン・オースティンの翻訳もやっているひとです。
先達はあらまほしきというのは、最近よく感じますが、この本を読んでまた強く感じました。オースティン観も大修正なのですが、一番の収穫はバージニア・ウルフへの誤解があったことが分かったことです。私は何となく、バージニア・ウルフはジェイン・オースティンを評価していないだろうと思っていました。ところが、大間違いで、「自分だけの部屋」(ISBN:4622045028)というエッセーの中でシャーロット・ブロンテとの比較をして、オースティンを絶賛しているのです。何となく日本の作家では珍しくオースティンを絶賛している夏目漱石を馬鹿にしはじめてましたし、意外な思いがしました。バージニア・ウルフもあ
とで読んでみよう。
夏目漱石に対する評価下げの感想は実はあまり変化しませんが、サマセット・モームも世界十大小説の一つにオースティンの「自負と偏見」を選んでいるのだそうで、なんだかオースティンを見直してしまいました。
私は頑固なほうで、自分のものの見方を他人から修正されるのが大嫌いという、いやな性格ですが、ここ最近は機嫌がいいのか、オースティンへの見方は大修正です。彼女の英国上流社会しか描かない姿勢を、読みやすくて面白いと思いながら、実は馬鹿にしてたのですが、時代背景を考えると、肯定的な見方ができるということがわかりました。
今週は「イギリス文学探訪」小池滋著ISBN:4140842083を読んでいます。これは面白い。「愛すべきイギリス小説」というのを以前紹介しましたが、それとも違った面白さです。 「愛すべきイギリス小説」は、小説の面白い部分をチラッと紹介して読む気を起こさせてくれるものでした。実際それでジェイン・オースティンを読み始めたわけですから、とても感謝していま
す。
一方、「イギリス文学探訪」のほうは、豊富なエピソードで19世紀英国文学への興味を加速させてくれます。例えば、ホレス・ウォルポールの「ゴシック小説」の紹介の中で、彼が悪趣味にも作ったゴシック建築、当時も侮蔑の対象になったらしいのですが、実は彼のゴシック小説の流行のおかげで、ゴシックまがいの住宅が大流行したらしいことが紹介されているのです。チャールズ・ディケンズの「大いなる遺産」の中で、見習い弁護士が郊外に風変わりなお城のような住宅を建てていて、そこにピップが招待される場面があります。そのお城のような住宅こそがそのゴシックまがいの住宅なのです。「なんか変だなあ」と思って「大いなる遺産」を読んだのですが、これで理解できました。
このような、ちょっとしたエピソード満載の本です。読む気を起こさせるというよりは、ディケンズやブロンテ姉妹、アガサ・クリスティー(これもちょっと話題にされます)などを読んでいると、とても面白く読めます。
ヴァージニア・ウルフという女流作家の本は読んだことがありませんが、「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」というお芝居(?)は耳に残っています。ホントのところはアメリカのヴァージニア州にいる狼のことかなと思ってたくらいなのですが、この本を読んで、彼女がケンブリッジの女性のカレッジで講演したことがあるだとか、交友の輪のなかにはケインズ(経済学部出身じゃないと知らないかな?)が居ただとか、最後には川に身を投げて自殺しただとか、色々なことを知りました。といっても、今のところ彼女の作品を読もうとは思いませんが。
挿絵や地図も豊富にありますので、ロンドンに住んだらこれを案内書にして一巡りしたいものだと思いました。
英国文学の紹介のときに、日本では夏目漱石が引用されることが多いですね。ジェイン・オースティンを彼は絶賛しているそうです。確かに読みやすいものね。実際にはロンドンではノイローゼになって殆ど活動はできなかったのに、日本に帰ると大威張りで法螺を吹く漱石は、たかが一週間の英国旅行で大いに英国風を吹かす私を見るようで、親近感さえ覚えます。

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